「ガイドライン」という言葉は、私たちの日常生活の中でもよく使われます。例えば、企業の行動規範やWebサイトの利用規約、商品の取扱説明書など、その種類は多岐にわたります。これらのガイドラインは、私たちに一定のルールや基準を示し、行動の指針となるものです。

ガイドラインを効果的に活用することで、業務効率化や品質向上につながるだけでなく、従業員・顧客満足度の向上にも貢献するでしょう。

今回は「ガイドライン」に焦点を当て、その概要やマニュアル・手順書との違い、ガイドラインの種類と役割、作成するメリット、作成手順・作成時のポイント、例文、具体的なイメージ、作成を効率化するツールなどについて解説します。今後、ガイドラインの作成・活用を検討している方はぜひご一読ください。

ガイドラインとは?

ガイドラインとは、ある特定の目的を達成するために、行動や判断の基準となる指針のことです。目標達成に向けた道筋を示すものであり、法律や規則とは異なり、強制力はありません。しかし、ガイドラインに沿って行動することで、業務効率化や品質向上、リスク管理などさまざまなメリットが得られます。

ガイドラインとマニュアル・手順書との違い

ガイドライン、マニュアル、手順書は、いずれも業務を円滑に進めるためのツールですが、それぞれ役割や目的が異なります。それぞれの違いを理解することで、より効果的に活用できるでしょう。

定義 特徴 役割
ガイドライン 基本的な原則や方針 抽象的に方向性を示す柔軟性がある 企業の行動規範や顧客対応ガイドライン
マニュアル 具体的な業務手順 具体的な手順が詳細に説明・標準化される 業務マニュアルや製品マニュアル
手順書 詳細な作業手順 マニュアルよりさらに具体的に説明される 機器の操作手順書やソフトウェアのインストール手順書

 

ガイドラインの種類と役割

ガイドラインはさまざまなビジネスシーンだけでなく、法律や医療などさまざまな分野でも活用されています。

1

ビジネスにおけるガイドライン

ビジネスにおけるガイドラインとは、組織運営や業務遂行において、守るべきルールや望ましい行動の指針を定めた文書のことです。

ビジネスにおいては、主に以下のようなガイドラインが作成されています。

種類 役割
業務ガイドライン 各業務の手順やルールを定めたもの。ガイドラインに沿って業務を行うことで、担当者による業務のバラつきを減らし、効率的な作業を促進する。
コンプライアンスガイドライン 法令遵守に関するルールを定めたもの。ガイドラインに違反する行為を未然に防ぎ、コンプライアンスリスクを低減する。
情報セキュリティガイドライン 情報管理に関するルールを定めたもの。組織が保有する情報資産をさまざまな脅威から守る。

2

法律におけるガイドライン

法律におけるガイドラインとは、法令の解釈や適用に関する具体的な指針を示すものです。

法律分野では、主に以下のようなガイドラインが作成されています。

種類 役割
法令解釈ガイドライン 個別法規の解釈に関するルールを定めたもの。具体的な事例や解釈を示して法律の解釈を明確にする。
訴訟ガイドライン 訴訟における主張や立証に関するルールを定めたもの。訴訟手続き(裁判)において、当事者(原告・被告)や裁判所が、訴訟を円滑かつ適切に進めるための指針となる。
行政指導ガイドライン 行政指導を行う際の基準や手続きに関するルールを定めたもの。国民や事業者に対する透明性を高め、恣意的な行政指導を防止する。

3

医療におけるガイドライン

医療におけるガイドラインとは、エビデンス(科学的根拠)に基づいて、病気の予防・診断・治療・予後予測などに関する診療の指針です。

医療分野では、主に以下のようなガイドラインが作成されています。

種類 役割
診療ガイドライン 特定の疾患や治療法に関する診療上の基準や推奨事項をまとめたもの。医療水準のばらつきを減らし、適切な治療の普及を図る。
予防ガイドライン 疾患予防のための具体的な方法や推奨事項を示したもの。病気の発症リスクを下げ、健康寿命の延伸を目的とする。
予防ガイドライン 看護ケアに関する具体的な基準や推奨事項を示したもの。患者の状態改善やQOL(生活の質)の向上を支援する。

ガイドラインを作成するメリット

ここでは、ガイドラインを作成するメリットについて、「組織・チーム全体へのメリット」と「個人メンバーへのメリット」に分けて解説します。

1

組織・チーム全体へのメリット

組織・チーム全体へのメリットとしては、主に以下のようなことが考えられます。

  1. 業務効率化:業務の手順や判断基準が明確になることで、迷いや手戻りが減り、効率的に業務を進められる

  2. 品質均質化:誰が担当しても一定の品質を保つことができ、顧客満足度向上につながる

  3. 教育・研修コスト削減:新しいメンバーや担当者がスムーズに業務を理解し、即戦力として活躍できるため、教育・研修コストを削減できる

  4. コミュニケーション円滑化:共通認識を持つことで、メンバー間のコミュニケーションが円滑になり、連携が強化される

  5. リスク管理:問題発生時の対応手順や責任の所在を明確にすることで、リスクを最小限に抑えられる

2

個々のメンバーへのメリット

個々のメンバーへのメリットとしては、主に以下のようなことが考えられます。

  1. 道筋の明確化:目標達成までのプロセスをガイドラインとして整理することで、次に何をすべきか、どの方向に進むべきかが明確になる

  2. 自信を持って業務に取り組める:ガイドラインに沿って業務を進めることで、自分の判断に自信を持てる

  3. モチベーションの維持:目標達成に向けた進捗状況をガイドラインに記録することで、達成感を積み重ねられる

  4. スキルアップ:ガイドラインを通じて自分の強みや弱みを把握し、必要なスキルを明確にできる

  5. ストレス軽減:ガイドラインに沿って行動することで、見通しが立ち、不安やストレスを軽減できる

ガイドラインの作成手順・作成時のポイント

ここでは、ガイドラインの作成手順・作成時のポイントについて10点解説します。ぜひ、作成時の参考にしてみてください。

1

目的を明確にする

まず始めに、ガイドラインを作成する目的を明確にしましょう。「何のために、誰に向けて、どのようなことを伝えたいのか」を具体的に定めることで、内容の焦点が定まり、効果的なガイドラインを作成できます。

2

対象者を明確にする

次にガイドラインの対象者を明確にしましょう。内容のレベルや表現方法を適切に調整できます。対象者の知識レベルや経験、職務内容などを考慮し、分かりやすく、実践的な内容になるように心がけましょう。

3

情報を収集する

次にガイドラインの作成に必要な情報を収集します。関連する法令や社内規定、過去の事例などを参考に、最新かつ正確な情報を集めましょう。

4

構成を検討する

次にガイドラインの構成を検討します。目次や章立てを工夫し、情報が整理され、読み手が理解しやすい構成を心がけましょう。図表やイラストなどを活用することも有効です。

5

内容を作成する

次に収集した情報を基に、ガイドラインの内容を作成します。具体例や事例を交えながら、分かりやすく、実践的な内容を記述しましょう。また、専門用語は避け、平易な言葉で説明することも重要です。

6

表現を工夫する

ガイドラインの表現方法を工夫することで、読み手の理解を深められます。箇条書きや表を活用したり、重要なポイントを強調したりするなど、視覚的に分かりやすい工夫を取り入れましょう。

7

関係者の意見を聞く

次に作成したガイドライン案について、関係者の意見を聞きましょう。さまざまな視点の意見を取り入れることで、より実用的で質の高いガイドラインを作成できます。

8

見直し・修正を行う

次に関係者からの意見を踏まえ、ガイドラインの見直し・修正を行います。必要に応じて、専門家や有識者の意見も参考にしましょう。

9

周知・徹底する

ガイドラインの作成後は、組織やチーム全体に周知・徹底します。研修や説明会などを開催し、ガイドラインの内容を理解してもらうことが重要です。

10

定期的な見直しを行う

ガイドラインは作成したら終わりではありません。状況の変化や新たな情報に基づいて、定期的に見直しを行い、常に最新の状態に保ちましょう。

ガイドラインの例文

ここでは、「業務遂行」「職場環境」「情報セキュリティ」の3つに焦点を当てた業務ガイドラインの例文をご紹介します。ガイドライン作成時の参考にしてみてください。

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業務遂行に関するガイドライン

項目 役割
基本原則
  • 全社員は会社の理念、ビジョン、経営目標を理解すること
  • 誠意を持って業務を遂行し、顧客満足度を高めること
  • 業務効率と生産性を追求し、資源の無駄を避けること
  • 常に自己啓発し、新しい知識やスキルを身につけること
  • チームメンバーと協力し、業務の円滑化を図ること
業務計画
  • 業務目標、計画、スケジュールを明確化すること
  • 定期的に進捗状況を把握し、計画の調整を行うこと
  • 上司や同僚と適切に連携・コミュニケーションをとること
情報共有
  • チーム内で業務情報を共有し、相互理解を促進すること
  • 社内ポータルやコミュニケーションツールを積極的に活用すること
  • 機密情報・個人情報の取り扱いには十分注意すること

2

職場環境に関するガイドライン

項目 役割
ハラスメント防止
  • セクハラ、パワハラ、モラハラなど全てのハラスメント行為を禁止する。
  • ハラスメントを受けた場合や目撃した場合は、速やかに上司または人事部に報告する。
多様性の尊重
  • 性別、年齢、国籍、出身地、宗教、障がいの有無などによる差別的な扱いを禁止する。
  • 社員一人ひとりの個性や価値観を尊重し合う。
  • 多様な人材が活躍できる職場環境を構築する。
健康管理
  • 自身の健康に留意し、十分な休息と睡眠を取ること
  • 定期的に健康診断を受診し、健康状態を把握する。
  • 体調不良の場合は無理をせず休暇を取得する。

3

情報セキュリティに関するガイドライン

項目 役割
パスワード管理
  • パスワードは他人に推測されにくいものを設定し、定期的に変更する。
  • パスワードを使い回さない。
  • パスワードを第三者に教えない。
情報漏洩対策
  • 社内ネットワークへの不正アクセスを禁止する。
  • 業務上知り得た機密情報を社外に漏洩しない。
  • USBメモリなどの外部記憶媒体の取り扱いに十分注意する。
ウイルス対策
  • セキュリティソフトを常に最新の状態に保つ。
  • 不審なファイルやプログラムをダウンロードしない。
  • ウイルス感染が疑われる場合は、速やかに情報システム部に連絡する。

ガイドラインの具体的なイメージ

ここでは、ガイドラインの具体的なイメージとして、いくつかの企業を例に上げてみましょう。

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スターバックスコーヒージャパン株式会社:行動規範

スターバックスコーヒージャパン株式会社では、以下のような行動規範を定めています。

ビジネス行動規範

ビジネス行動規範

(出典:ビジネス行動規範|スターバックスコーヒージャパン株式会社)

2

富士通株式会社:情報セキュリティ基本方針

富士通株式会社では、以下のような情報セキュリティ基本方針を定めています。

情報セキュリティ基本方針

情報セキュリティ基本方針

(出典:情報セキュリティ基本方針|富士通株式会社)

3

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン:利用規約

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンでは、以下のような利用規約を定め、開示しています。

利用規約

(出典:利用規約|株式会社セブン‐イレブン・ジャパン)

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まとめ:ガイドラインの役割を理解して適切に運用しよう!

今回は「ガイドライン」に焦点を当て、その概要やマニュアル・手順書との違い、ガイドラインの種類と役割、作成するメリット、作成手順・作成時のポイント、例文、具体的なイメージ、作成を効率化するツールなどについて解説しました。

ガイドラインは、さまざまな分野において、目標達成のための指針となる重要なツールです。適切に活用することで、業務効率化や品質向上、リスク管理、法令遵守などさまざまなメリットが得られます。ぜひこの機会に、ガイドラインの作成を検討してみてはいかがでしょうか。

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