日々の業務において、作業の指示が曖昧なために、認識のズレや手戻りが発生していませんか。作業指示書は、作業内容や手順、注意点などを明確にし、業務効率化と品質向上を実現するための重要なツールです。

今回は「作業指示書」に焦点を当て、その概要やマニュアルとの違い、目的とメリット、記載すべき項目、書き方、分かりやすくするポイント、作成を効率化するツールなどについて解説します。今後、作業指示書の作成・活用を検討している方はぜひご一読ください。

作業指示書とは?

作業指示書とは、業務における作業内容や手順、期限などを具体的に示す書類のことです。主に作業を円滑に進め、その品質を維持するために作成されます。

作業指示書とマニュアルとの違い

作業指示書とマニュアルは、どちらも業務を円滑に進めるための重要な文書ですが、目的と内容に明確な違いがあります。簡単にいうと、作業指示書は「個別の作業」に対する「具体的な命令」であり、マニュアルは「業務全体」に対する「標準的な手順や知識」をまとめたものといえます。

項目 作業指示書 マニュアル
目的 特定作業の指示 業務の標準化、教育
対象 具体的な作業 定型的な業務
内容 具体的な手順、日時、場所など 業務全体の流れ、知識、注意点など
期限 あり なし
利用場面 一時的・臨時的な作業 日常業務、教育、研修

作業指示書の目的とメリット

作業指示書は、業務を円滑に進める上で欠かせないツールです。その目的とメリットを理解することで、より効果的に活用できます。

1

作業指示書の主な目的

  • 作業内容の明確化

  • 情報共有と認識の統一

  • 作業の標準化と品質の維持

  • 作業効率の向上

  • 安全確保と事故防止

  • 責任の所在の明確化

2

作業指示書の主なメリット

  • 業務ミスの削減

  • 納期遵守

  • 教育コストの削減

  • 顧客満足度の向上

  • 業務改善

作業指示書に記載すべき項目

作業指示書に記載すべき項目は、作業内容や業種によって異なりますが、一般的に以下の項目が含まれます。

1

作業名・タイトル

「作業名・タイトル」は、その作業内容を簡潔かつ明確に表すために重要な要素です。適切な作業名・タイトルを設定することで、作業者だけでなく、関係者全員が作業内容を瞬時に把握し、誤解や認識のズレを防げます。

tips
  • 「〇〇機械の定期点検作業」

  • 「〇〇会議室の清掃と整理」

  • 「〇〇システムのデータバックアップ」

  • 「〇〇ソフトウェアのアップデート」

  • 「〇〇製品の梱包作業」

2

作業日時・期間

「作業日時・期間」は、作業スケジュールを明確にするために重要な項目です。具体的に記載することで、作業者はいつ、どのくらいの時間で作業を行う必要があるのかを把握し、計画的に作業を進められます。

tips
  • 作業日時:2025年3月27日(木)10:00~12:00

  • 作業期間:2025年3月27日(木)~2025年4月9日(水)

  • 期限:2025年4月9日(水)

3

発行日

「発行日」は、その指示書がいつ発行されたのかを示す重要な情報です。発行日を記載することで、記録管理や進捗管理、責任所在の明確化、改訂履歴の管理などが可能です。

tips
  • 「〇年〇月〇日」

  • 「〇/〇/〇」

4

発行者・指示者

「発行者・指示者」の記載は、責任の所在を明確にし、疑問点や不明点が発生した場合の問い合わせ先を示すために重要です

tips
  • 「発行者:〇〇 〇〇」

  • 「指示者:〇〇 〇〇(〇〇部)」

5

作業者・担当者

「作業者・担当者」の記載は、誰がその作業を実施するのかを明確にするために重要です。

【例】

  • 「作業者:〇〇 〇〇」

  • 「担当者:〇〇 〇〇(〇〇部)」

6

作業場所

「作業場所」の記載は、作業者がどこで作業を行うのかを明確にするために重要です。

tips
  • 「〇〇工場〇〇ライン」「〇〇ビル〇〇階〇〇室」「〇〇現場〇〇エリア」

  • 「〇〇の隣」「〇〇の向かい」

  • 「〇〇から〇〇まで」

7

作業内容・作業手順

「作業内容・作業手順」の記載は、作業者が何をすべきかを明確にするために重要な項目です。具体的に記載することで、作業の目的や手順、注意点などを共有し、作業の品質と効率を高めます。

【例:機械の点検作業】

tips例:機械の点検作業
  • 作業内容:

    1. 機械の電源を停止する

    2. 外観に異常がないか確認する

    3. オイルの量を確認し、必要に応じて補充する

    4. ボルトやナットの緩みがないか確認し、必要に応じて締め付ける

    5. 機械の電源を投入し、動作確認を行う

    6. 点検結果を記録する

8

使用する機材・工具

「使用する機材・工具」の記載は、作業者が作業を円滑に進めるために必要な情報を共有し、準備を確実にする上で重要です。

tips
  • ドライバー(プラス、マイナス)

  • レンチ(10mm、12mm、14mm)

  • オイル差し

  • ウエス

  • 安全メガネ

  • 作業用手袋

9

図面・資料

「図面・資料」の添付は、作業内容をより正確かつ詳細に伝えるために重要です。図面や資料を添付することで、作業者は視覚的に情報を把握し、誤解や認識のズレを防げます。

tips
  • 〇〇機械組立図(資料番号:ABC-123、版数:Rev.2)

  • 〇〇機械部品表(資料番号:ABC-456、版数:Rev.1)

  • 資料保管場所:〇〇フォルダ

10

完成物の仕様・品質基準

「完成物の仕様・品質基準」の記載は、作業者が最終的にどのような状態に仕上げるべきかを明確にするために重要です。具体的に記載することで、作業の品質を一定に保ち、顧客満足度を高めます。

【例】

製品の組立作業 書類の作成作業
完成物の仕様:
  • 外形寸法:〇〇mm × 〇〇mm × 〇〇mm
  • 重量:〇〇kg
  • 動作確認:〇〇秒以内に〇〇回動作
品質基準:
  • 外観:傷・汚れ・変形なし
  • 動作:正常に動作すること
  • 検査方法:目視検査、動作確認
完成物の仕様:
  • ページ数:〇〇ページ
  • フォント:〇〇
  • 文字サイズ:〇〇pt
品質基準:
  • 誤字・脱字なし
  • 内容が正確であること
  • 体裁が整っていること
  • 検査方法:校正、内容確認
11

目標作業時間

「目標作業時間」の記載は、作業者が時間意識を持って効率的に作業を進めるために重要な要素です。

tips
  • 目標作業時間:1時間30分

12

安全上の注意事項

「安全上の注意事項」の記載は、作業者の安全を確保し、事故や災害を未然に防ぐために重要です。作業内容や作業場所に応じて、具体的な注意事項を記載する必要があります。

【例】

高所作業における安全上の注意事項 電気作業における安全上の注意事項
  • 作業前に足場の安全性を必ず確認する
  • 作業中は安全帯を必ず着用する
  • 強風・悪天候時は作業を中止する
  • 工具・材料の落下防止に注意する
  • 緊急連絡先:〇〇
  • 作業前に電源を必ず遮断する
  • 絶縁性の保護具を着用する
  • 濡れた手で電気機器に触れない
  • 電気配線の異常を事前に確認する
  • 緊急連絡先:〇〇
13

作業条件

「作業条件」の記載は、作業者が安全かつ効率的に作業を行うために、作業環境や必要な準備などを明確にする上で重要です。

tips
  • 作業環境:屋内、温度25℃、湿度50%、照明〇〇ルクス

  • 作業時間:9時~17時(休憩1時間)

  • 作業場所:〇〇工場内〇〇エリア

  • 必要な設備・材料:〇〇機械、〇〇工具、〇〇材料

  • 保護具:ヘルメット、安全靴、作業用手袋

  • 作業人員:3名

14

休憩時間

「休憩時間」の記載は、労働基準法を遵守し、作業者の健康と安全を確保するために重要です。

tips
  • 休憩時間:12:00~13:00(1時間)

  • 休憩場所:休憩室

  • 注意事項:休憩時間中の喫煙は所定の喫煙場所でお願いします

15

作業実績

「作業実績」の記載は、作業の成果を記録し、今後の作業計画や改善に役立てるために重要です。具体的に記載することで、作業の進捗状況や問題点、改善点などを把握できます。

tips
  • 作業開始時間:2025年4月27日 10:00

  • 作業終了時間:2025年4月27日 12:00

  • 作業時間:2時間

  • 作業内容:〇〇機械の点検、オイル交換、ボルト締め

  • 完成物:点検完了報告書

  • 問題点:〇〇部品の摩耗、交換実施

  • 作業者:〇〇 〇〇

16

特記事項

「特記事項」の記載は、通常の作業指示では伝えきれない重要な情報や注意点を補足するために設けられます。

tips
  • 点検後、異音がする場合は、直ちに〇〇(担当者名)まで連絡してください

  • 〇〇部品は、特に摩耗しやすいので、念入りに点検してください

  • 点検結果は、〇〇時間以内に〇〇システムに入力してください

作業指示書の書き方

ここでは、作業指示書の書き方について7つのステップに分けて解説します。ぜひ参考にしてみてください。

1

目的を明確にする

はじめに「なぜこの作業が必要なのか」「達成すべき目標は何か」を明確にします。目的を明確にすることで、作業内容や手順がより具体的になります。作業の重要性や期待される成果を具体的に記述したり、作業の開始点と終了点を明確にしたりしましょう。また、どの範囲までが作業対象となるのかについても定義します。

2

対象者の明確化

次に、誰がこの作業を行うのか、対象者を明確にします。対象者のスキルや経験に合わせて、指示内容を調整しましょう。

3

作業をフローごとに整理する

「いつ、どこで、何を、どのように行うのか」、作業全体の流れを把握して主要なステップを洗い出します。各ステップをさらに細かく分割し、具体的な作業内容を明確にしましょう。

4

簡潔かつ具体的に記載する

各ステップの作業手順を具体的に記述します。使用する工具や材料、注意事項などを詳細に記述します。必要に応じて、図や写真、動画などを活用して、視覚的に分かりやすくする良いでしょう。

5

確認事項の記載

作業完了後の確認事項や報告事項を記載します。確認項目を設けることで、作業の品質を確保します。

6

安全対策・注意点を記載する

作業指示書に安全対策・注意点を記載することは、作業者の安全を確保し、事故や怪我を防止するために重要です。

7

レビューと修正

作成後、関係者で内容を確認し、必要に応じて修正を加えます。第三者の視点を取り入れることで、より分かりやすい作業指示書になるでしょう。

作業指示書を分かりやすくするポイント

ここでは、作業指示書を分かりやすくするポイントについて5点ご紹介します。

1

5W1Hを意識して指示漏れを防ぐ

5W1Hを意識して、指示漏れを防ぎましょう。

  • Who(誰が):作業担当者を明確にする

  • What(何を):具体的な作業内容を記載する

  • When(いつ):作業日時や期限を明記する

  • Where(どこで):作業場所を記載する

  • Why(なぜ):作業の目的や理由を説明する

  • How(どのように):作業手順や方法を具体的に記載する

2

難しい専門用語を避け、シンプルな表現を使う

難しい専門用語を避け、シンプルな表現を使うことは、作業指示書を分かりやすくする上でとても重要です。誰が読んでも理解できるように、具体的かつ簡潔な言葉で記述しましょう。

【ポイント】

  • 日常的な言葉に置き換える

  • 具体的な動作で説明する

  • 具体例を使う

  • 専門用語を使う場合は補足説明を加える

  • 短く簡潔な文を使う

  • 受動態ではなく能動態を使う

  • 曖昧な言葉を避ける

3

視覚的に分かりやすくする

言葉だけでは伝わりにくい場合、図やイラストを使うことで視覚的に理解を深められます。作業手順を時系列に沿って記述し、図や写真などを活用して視覚的に分かりやすくしましょう。

4

テンプレートを活用してフォーマットを統一する

作業指示書を作成する上で、テンプレートを活用してフォーマットを統一することは、業務効率化と品質向上のために有効です。テンプレートを「無料」で配布しているWebサイトや企業はたくさんあるため、積極的に活用してみてください。

5

動画マニュアルや写真を補足として活用する

動画マニュアルや写真は、作業指示書をより分かりやすくするための有効な補足資料となります。

【動画マニュアルや写真のメリット】

  • 視覚的に動きや手順を伝えられるため、複雑な作業でも理解しやすい

  • 短時間で多くの情報を伝えることができる

  • テキストでは伝えきれないニュアンスやコツを伝えられる

  • 多言語対応の字幕やナレーションを追加することで外国人にも理解しやすい

  • 実際の作業風景を見せることで、イメージが湧きやすく、ミスを防げる

  • 遠隔地にいる作業者にも、同じ情報を共有できる

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(出典:Notta Showcase

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まとめ:作業指示書の書き方をマスターして効果を最大化しよう!

今回は「作業指示書」に焦点を当て、その概要やマニュアルとの違い、目的とメリット、記載すべき項目、書き方、分かりやすくするポイント、作成を効率化するツールなどについて解説しました。

作業指示書は、建設業だけでなく、製造業、IT業界などさまざまな分野で活用されています。作業指示書を適切に活用することで、業務の効率化と品質向上を実現し、安全な職場環境を構築できるでしょう。作業内容や状況に合わせて適切な作業指示書を作成・活用して、業務の課題を解決し、効率よく目標の達成を図ってみてください。

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